『ゆっくりいそげ』レビュー&要約

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今回は『ゆっくりいそげ』のレビューをしていきたいと思います。

ビジネスとスローの間をいく、「ゆっくりいそげ」。

理想と現実を両立させる新しい経済の形、働き方を目指した一冊です。

『ゆっくりいそげ』の概要

単行本 : 246ページ

出版社 : 大和書房

著者 : 影山知明

値段 : 1500円+税

東大法学部を卒業し、外資系戦略コンサルティングファーム、そしてベンチャーキャピタルの創業を経て、西国分寺にカフェを開いたという面白い経歴を持つ著者による『ゆっくりいそげ』。

まさに「ザ・エリート」の道から地元で小さなカフェを開くことにした著者が、「人を手段化させない経済」について書いた一冊です。

以降、個人的に印象的だったこと、面白いと思った点をいくつかを取り上げていきたいと思います。

『ゆっくりいそげ』の要約

「特定多数」を大事にする

著者は戦略コンサルティングファームと言うまさに「グローバル資本主義」の中で仕事をしてきた著者は、世のすべてがグローバル資本主義に一本化されればいいというわけではない、と言います。

もちろんグローバルな資本主義については著者も否定しておらず、成長や効率を求める資本主義の活性、便利さは確かにあるのだが、だからと言ってすべてが効率化されればいいかというとそうではない。

そこで著者が提案しているのが「特定多数経済」。

グローバル経済における価値交換は、不特定多数の参加者で行われます。コンビニやスーパーでは、多くの人が普遍的な価値を感じて生産者のことなど特に考えずに購入します。

著者の言う「特定多数」は、同じように市場を媒介しつつも、特定多数で価値交換をするローカルなシステムだ。

多くの人に普遍的な価値があるというわけではないけれど、特定の人、特定の関係においては価値あるものとなるもので交換をしていくのです。

そうすることで、ただ「安い」「便利」だけではない、複雑な価値の交換ができます。

例えば著者がつくったカフェでは、コーヒーが他のチェーン店より3倍も高い値段しますが、それに価値を見出してくれる人のおかげで、国産のものを使ったり、冷凍食品を遣わずに済んだりといったことができるのです。

このような「特定多数経済」で、値段が全てではない、複雑な価値の交換が成り立つようになれば、日本の農業のようにグローバル資本主義では失われてしまうものを守ることもできるのではないでしょうか。

そしてもちろん、その相手が特定少数の内輪なものでは、ビジネスが成り立ちません。

「不特定多数」ではなく、「特定少数」でもなく、「特定多数」なのです。

なるほど

「特定多数」の人たちと、複雑な価値を交換する場があるのがいい

消費者的な側面を刺激しない

著者が経営するクルミドコーヒーでは、ポイントカードや割引のチラシを導入しないそうです。

というのも、そのようなお得さは人の「消費者的な人格」を刺激するからです。

お得な情報は人の消費者的な人格を刺激し、「もっと安く」、「もっと多くのものを手に入れたい」という気持ちを引き出すのです。

そして同様に、お客さん側がそういう気持ちでいることで、お店も「もっと儲けたい」というように自己の利益に走ってしまいます。

そのような関係にならないためには、逆に、人の「受贈者的な側面」を引き出せばいいのです。

人は何かいいものをもらった時に、「ああ、いいものを受け取っちゃったな。お返ししたいな」という気持ちになります。

それを著者は「健全な負債感」と呼んでいます。

私はこの言葉になるほどなと納得感を覚えました。

人はいいものを受け取ることで、「もっと支払ってもよかったな」、「お返ししないと」という負債感を感じるのです。

そしてこの健全な負債感が、その人がまたお店に来てくれたり、他の人に何かを贈る気持ちになったりすることにつながるのです。

このように交換を等価にせず、より多くを送ったと感じさせることで、カフェではお客さんが増え、お店の雰囲気も良くなるといいます。

何もお店に限った話ではないと思います。

テイクの動機(利用する関係)ではなく、ギブの動機(支援する支援する関係)から始めるべきなのです。

なるほど

ギブの精神で人に何かを贈ることで、人の「健全な負債感」を引き出し、「贈る」の連鎖を生む

ギブを大切にする

そしてその「ギブを大切にする」というのは、外に向かってだけではありません。

価値を一緒に提供するメンバーとの交換も、ギブから始めるべきなのです。

社員が「給料のために出勤しよう」となると、お店側、経営者側も「同じ給料を払うんだからもっといい働きをしてもらわやきゃ」「同じ働きなら給料を減らそうかな」となります。

そうしてお互いが利用し合う関係になってしまうのです。

一方でテイクから始まる、「支援する関係」にある組織では、給料は働きに対する感謝の道具となります。

さきほどの言葉で言うと、メンバーが働けば働くほど、会社としては「こんなに働いてくれている」「これじゃあ足りないな」と健全な負債感が高まるのです。

そして、お店側がその健全な負債感を感じ、受け取ったもの以上のものを返そうとすれば、今度はメンバーが、給料だけではなく働くことに満足感を得るようになったり、もっといい働きをしようと組織へ貢献するようになったりすします。

ギブから始めることで、受け取った側のギブしたい気持ちを引き出し、こうして受贈者的な人格に基づく組織が実現します。

そしてこのように内部での交換原則がギブから始められることによって、外部との交換もギブの交換が当たり前になり、結果、外に向けた生産の量や質が高まることにもつながるのです。

なるほど

組織内部でも、ギブから始めて「健全な負債感」を高めよう

時間を味方にするには

現代のグローバルな資本主義的な社会では、常に時間との戦いで、より効率的に進めようという空気があるのではないでしょうか。

時間を敵とみなさず、味方にしていくためには、「目的や目標を絶対視しすぎないことが大事」と著者は言います。

「いつまでにこれをやらなきゃ」「今後はこうなりたい」という気持ちが強くなると、「今」の自分がマイナスと認識されてしまいます。

今あるものに感謝し、満足感を持つ、または今をマイナスではなくゼロと捉えるだけで、少しの改善でもプラスに捉えられるようになるのです。

そうすると時間が、常に加点方向に向かうようになるでしょう。

なるほど

「足るを知る」精神で、今あるものに満足感をもってみよう

まとめ

ビジネスにおいて大切なことを教えてくれる、非常に読み応えのある内容でした。

私の仕事観に大きく影響を与えてくれる一冊となりました。

一見非効率なように見えますが、実はお互いを支援する姿勢こそ、お互いの関係性を変え、豊かな社会が作られ、ビジネスが循環していくのです。

組織やコミュニティを運営する人はもちろん、ビジネスマンはぜひ一度読んで、自分の仕事について振り返ってみてください。

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